団活の終わった後の時間、俺とハルヒは他の団員を帰し2人きりで教室にいた。
ハルヒが俺に話しがあるっていうからここにいるんだが…
黙ったままでじっと俺を見つめたままの状況で長い時間が過ぎている。
なんだか言葉を発してはいけないような雰囲気で。
俺はただハルヒが何か言うまでじっと待っている事にした。
夕日が真っ赤に染めた教室はどこか普段過ごしている場所とは違うように感じた。
何だかデジャブを感じるが、あのことを思い出すのは止めておこう。
「キョン…」
ついにハルヒが口を開いた。
「あたし。あたしね…。キョンの事が好き。大好き。
恋愛は精神病の一種なんて…ただ熱に浮かされた一時の感情にしか過ぎないって思ってたけど」
ここまで一息でいってのけた。
空気をスゥっと吸い込みハルヒは続ける。
「ずっと消えないこの気持ちは本物よ。大好きなの。…キョンはどうなの?」
一瞬の沈黙。
俺は…俺の気持ちは…
「ごめん。ハルヒ。俺お前とは恋人関係には慣れない。」
「…」
ハルヒの表情が悲しみの色に染まる。
「なぜなら…俺はお前とずっと一緒にいたいからだ。」
「え…?」
泣き出す手前だった顔がぽかんとして、俺をみる。
「じゃっじゃぁ…彼女にしなさいよ!」
「だめだ。」
「なんでよ!!」
理由があるんだ。2つ。1つは伝えてやれないけど…
「…そういう関係になったら、ずっと一緒にいれる可能性が低くなる!
万が一、もし別れたとしたら絶対に気まずさが残る。
そうして疎遠になるのは耐えれない。」
「…」
「俺はずっとお前と一緒に過ごしていたい。だから彼女には出来ない。
俺とお前は親友同士だからな。」
途端にハルヒの顔が赤くなった。
「…あんたの気持ちはよーくわかったわ!ずっと一緒にいてあげる。感謝なさい。
男女の友情の深さを周りにみせつけてやるわよっ!」
ちょっと瞳が潤んでるぞハルヒ。
くしゃっと。髪をなでてやる。
「帰るか。ハルヒ。」
「うんっ…!」
いつもの道まで行き、分かれ道でお互い顔を見合わせ、ニッと笑う。
「じゃぁね。キョン。」
「あぁまた明日な。」
互いに背を向けて歩みだす。ちょっと罪悪感だ。ごめんなハルヒ。
俺はもう。
さて…と。
携帯を取り出す。
そしてあいつに。
ハルヒと付き合えないもうひとつの理由である奴に。
先に最も愛しているあいつに電話かける。
『お掛けになった電話は、電波の届かない所にあるか…』
聞きなれたアナウンス。
もし閉鎖空間にいるなら。
このアナウンスすら聞こえず切れるはず。
それ以外の時俺からの着信はツーコールで取る男に電話が通じないその時は。
…拗ねてるってことだ。
今日は特に顔を合わせていないから奴の機嫌を損ねるようなこはないんだが。
理由を知るべく奴のマンションへ足を向ける。
今はなんだかお前に会いたいんだよ俺は…。
「おい。古泉いるんだろ。ここを空けろ。」
俺は今チェーン越しに部屋ですねているであろう古泉に声をかける。
「…僕はっ。ヒック…ここにいま…ぜん…グスン。」
泣いてる。
というか、返事をしておいてここにいないとはどういう了見だ。
「ここを明けないと0.5秒でお前をきら…」
ガターンっ!
チェーンがまるで紙テープのように真ん中で引きちぎられた。
お前がチェーンとしての短い生涯を終えたのは俺がちゃんと看取ってやったからな。
心置きなく成仏してくれ。
下らないことを考えている場合じゃないな。
慌てた様子で、扉を開けた古泉の顔はいい男が台無しどころの話じゃなかった。
涙で顔をぐしゃぐしゃにして。鼻水も垂れそうだ…
「…ど、どうしたんだよ。」
びっくりしすぎてどもってしまった。
「あぁ…うっ…だっだっ…だっで…」
…ちょっとうざい。
玄関先で泣かれてるだけでは埒が開かないので
仕方なく手を引いてリビングまできた。
俺は先にソファに浅く腰をかけて、突っ立ったままの古泉にむかって両手を差し出して
「ほら。来い。」
「…うっ。うっ。」
子供のように俺に抱きつくと顔を胸に埋めて泣き続けた。
その背中をよしよしという風になでてやる。
「どうした?落ち着け。なんで泣いているか理由を言え。」
すこし落ち着いたのか涙を拭ってやっと話をしだした。
「…すみません。…先ほどの涼宮さんとあなたの話を聞いてしまって…」
あぁ。なるほどね。
「恋人同士は…いつまで一緒にいれるか分からないんでしょう…だったら僕もあなたと友達にぃ…っ。」
…ふぅ。また泣きだしたこいつをみて可愛いって思う俺は相当重症だろうな。
古泉の頭に手をおいてやる。
「馬鹿だな。あれは半分言い訳なようなものだ。
それにハルヒとは付き合っても長続きするようには思えないからな。
今のままでずっと仲良くやっていきたいと思ってるから…」
それにまさかお前が聞いているとは思っていなかったしな。盗み聞きは犯罪だ。
だが、まだ古泉はイマイチ納得がいっていないようである。
「…なぁ古泉。あんな言葉で俺をあきらめるのか?ずっと一緒にいたいとは思ってくれないのか?」
「そんなはずはありません!墓場までいくつもりです!」
ものすごい勢いで顔を振りった状態な上にこの上の無い情けない顔でプローポズをされるとは思わなかったな。
恥ずかしいやつめ。
「…少なくとも俺もそう思ってるだから、安心しろよ。」
な?と古泉の顔を両方の手で挟みこみそのまま口付ける。
今日だけのサービスだ。お前を安心させるためならなんだってしてやる。
うれしかったようで落ち着きを取り戻した古泉は、はい。と笑顔で微笑み。
「ずっとずっと愛していますよ。」
例えなにがあっても。耳元で囁かれもう一度口付けられる。
服の中に古泉の手が滑り込んでくる。
このあとの行為を想像して熱くなる体と頭。
その隅でふと考える。
こいつを信じていないわけではないけれど。
いつか気持ちが離れてしまったらどうしよう。
もう笑いあえる関係じゃなくなったら…
自分で古泉には否定したやったのに最低だな。
自分のなかにいくつものを矛盾を抱えてしまうほどに、こいつを愛している。
甘い痺れのが全身を襲う。考えるのやめ快楽だけに没頭することにした。
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